『今ひとたびの、和泉式部』諸田玲子|刊行記念特別インタビュー|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー
定価:1,700円(本体)+税 3月3日発売比類なき和歌の才能で王朝の宮廷に名を馳せながら、藤原道長(ふじわらのみちなが)からは「浮かれ女(め)」、紫式部からは「けしからぬかたこそあれ」などと揶揄(やゆ)され、派手好みの恋多き女性というイメージが強い和泉(いずみ)式部。しかし、彼女の素顔はいかなるものだったのか――。
これまでも数々の歴史上の女性を瑞々しい筆致で書いてきた諸田玲子さんの最新作『今ひとたびの、和泉式部』は、その謎に迫る一冊です。以前から和泉式部は非常に気になる存在だったという諸田さんに、本作に込めた思いを伺いました。
聞き手・構成=小元佳津江/撮影=織田桂子
――諸田さんはこれまでにも歴史小説、時代小説を書かれていますが、そこにかける思いを改めて伺えますか?
もともと私は歴史に詳しかったわけではなく、どちらかというと苦手だったくらいなんです。それでも歴史物を書いているのは、ひとえに歴史の中にうずもれた女性をはじめとする声なき人の声に耳を傾け、その生き生きとした姿を書きたかったからなんです。歴史上の人物ってどうしてもある一定のイメージで見られてしまいがちですよね。でも、人にはさまざまな面があり、知られざる顔もある。それを描き出すことで、既成概念を壊すとまではいかなくとも揺るがしたい。そう思っているんです。
歴史物を書くにあたって資料や研究者の先生方が書かれた本もたくさん読みましたが、やはり歴史というのは全体的に男性目線で語られていて女性に対してはまだまだ理解されていない部分も多いなと感じたんです。ならば、歴史の知識がない私だからこそむしろ新しい視点で彼女たちを書くこともできるのではないか、そんな思いでこれまで書いてきました。
――そのなかでも今回、平安時代の和泉式部を選ばれた理由はどのあたりにあったのでしょうか?
平安朝は昔から好きだったんです。実は、現代とかなり似ているんですよ。表面は平和だけれどいじめも格差も賄賂(わいろ)もあるし、出世のためには媚びも売るし。そういう意味で以前から非常に興味がありました。この時代の女性では小野小町(おののこまち)や伊勢なども気になっていましたが、和泉式部が筆頭でした。道長からは「恋多き派手好みの女」と揶揄され、スキャンダラスなイメージが強いですが、本当は違うんじゃないかと。
「黒髪のみだれもしらずうち
www.bungei.shueisha.co.jp
0コメント